国立病院機構水戸医療センター   今田了 山崎静

当院は、「第三次救命救急センター」として24時間体制で、急性心筋梗塞、心不全、脳卒中、急性腹症、多発外傷などを積極的に受け入れています。特にドクターヘリの基地病院になり、「レインボーMMC」というコードネームで、昨年度のフライト回数は580件(救急車3200件)に上りました。また、日本救急撮影技師認定機構の指定実地研修施設に認定され、茨城県から全国に救急放射線技術を発信する起点となれるよう、医師や看護師等の他職種からの協力も多く得ながら、スタッフ一同日夜業務に励んでいます。

救急初療室

救急撮影室のストレッチャーはどのようなものですか?

ストレッチャーはHill-Rom社製を使用しています。しかし、体圧分散技術を用いたマットレスを使用している為、当初バックボードを乗せた状態でスペーサーを設置すると、マットレスの性能上、スペーサーが沈んでしまい、カセッテを挿入するスペースが狭くなり、カセッテの操作性と検査の迅速性が落ちる結果となりました。そこで、体重別によるマットレスの沈み込みの深さと、当院に搬送利用されている2種類のバックボートの形状を考慮し、携帯性と加工性それに画像への影響に優れたスタイロフォーム(断熱材)で新しいスペーサーを作成し運用しています。運用するに当たっては、救命スタッフへ説明と運用方法を伝達講習した事で、患者さんが初療室へ搬入された際には、救急外来の医師及び看護師がスペーサーを設置してくれているので大変助かっています 

生体モニターと呼吸器はどのような機種を使用していますか?

BSM-2300 ライフスコープ(日本光電)
e360(Newport Medical)

一般撮影装置はどのような装置ですか?

救急処置室2部屋のうち1室は、日立メディコ・SX-A7(天井式保持装置),DHF-155Ⅱ(X線発生装置),ZU-L3TY(可動絞り)、を設置してあります。その他の1室においてはポータブルX線装置(TOSHIBA・IME-100A)で対応しています。Primary surveyにおける胸部・骨盤X線撮影の際には、天井式保持装置を使用した方が救命スタッフの邪魔にならず、かつ処置を進行しながらのポジショニング及び迅速性がポータブル装置と比較すると格段に有用であり、救急処置室には必要な装置と考えています。また、救急処置室以外での撮影に関してはTOSHIBA・KXO-80Gを設置した一般撮影室にて検査を施行しています。

一般撮影装置の受像系は何を使用していますか?

救急処置室及び一般撮影室においてFCR(Speedia CS)を使用しています。但し、災害時などにおいてモニタ診断が制限される事を想定して、フィルム出力ができるようドライイメージャー(DRYPIX700)も設置しています。 

その他

超音波装置(FAST):Xario SSA-660A (TOSHIBA)
汎用血液ガス分析装置:b123 POC システム(Cobas)
遠心ポンプコントローラー(PCPS):SP101(テルモ)

CT室

CT装置は何ですか?

SOMATOM Definition AS(SIEMENS)です。z-Sharp technologyを使用した64-sliceの装置で、ガントリ開口部が78cmと広く、外傷CT検査においては、ほぼ全例バックボード上での検査となる為、ラインやチューブそして上肢の挙上などの様々な作業や動作に際して有用であると考えます。但し、天板と寝台の隙間が広い為に、天板のポジション移動の際には衣類や毛布、ライン・チューブ類などが巻き込まれないよう注意しなければなりません。その対応策として、通常の天板よりも幅が少し広い治療計画用のフラット天板を使用して、その有用性を収集している所です。 

ワークステーションは?

AZE Virtual Place Lexus 64を使用しています。最近、救急医療における3D画像の依頼が増加しており、特に脳血管領域、整形領域そして外傷の骨盤骨折や消化管出血に対する血管走行などに対応しています。スタッフ全員、最適かつ迅速に画像処理を施し提供できるよう頑張っています。 

血管造影室

どのような血管造影装置を使っていますか?

Allura Xper FD20/20(PHILIPS):放射線・脳神経領域
Infinix Celeve CB(TOSHIBA):循環器領域
血管撮影室の間取りが広い為、骨盤損傷に対する経カテーテル的動脈塞栓術では、多くのスタッフがそれぞれの役割を果たしやすい空間となっており、救命医が塞栓術そして整形外科医が創外固定を同時進行する事も少なくありません。

MRI室

MRI装置は何を使用していますか?

MAGNETOM Avanto 1.5T(SIMENS)を使用しています。頭部・脊髄・腹部(MRCP)・関節系など24時間対応していますが、呼び出し体制ではない為、当直者の負担が大きく吸着事故の危険性や検査中に他の急患対応ができないなど問題点が多くあります。今後、救急医療におけるMRI検査の運用について再検討する必要があると考えます。

その他

急性期脳梗塞や脊髄損傷など、救急医療におけるMRI検査の依頼は増加傾向にあります。それに伴い病院スタッフのMRI検査に対する安全管理の教育や、放射線技師の各疾患に対する最適なシーケンスの選択と症例について検討し、安全かつ最適な医療情報を提供できるよう対応しています。

救急担当者は何名ですか?

管理職と治療担当技師を除く14名の二交代勤務体制で、平日の当直及び土日の日勤当直は1名で対応しています。

その他なんでも

「楽しい職場があってこそ良い仕事ができる!」をモットーに、医師・看護師・救命士など他の医療スタッフとの連携も強化し、毎日救急医療の現場で汗を流しています。救命科カンファレンスへ参加する事で情報共有と連携強化そして、我々が提供した画像がどのように診断または治療へ繋がっていく事の重要性を学び、救急に携わる診療放射線技師のスキルアップに繋げています。また、週に一度「放射線科症例検討会」を開き、救急のみならず日常業務から取り上げた各モダリティの症例画像について再検討し「もっとこのようなプロトコル(シーケンス)を選べばよかったかも」、「この症例についてはVRではなくMIPの方がよいのでは」、「この重篤な疾患は救急医療に携わる技師として読影補助しなければならなかった」などなど、放射線技師同士だからこそ言える撮影技術や条件、そして読影などにスポットを当てた症例検討会を実施しています。
当院は常勤の放射線科医師が不在の為、放射線技師に対する読影補助の期待が大きく、今後は読影に関する教育について早急に構築したいと考えています。これは地方における放射線科医師不足の現実であり、それに対し我々が今できる事を考え、計画し、実行しなければなりません。
国立病院機構水戸医療センターが日本で一番の救急撮影技術を行っている施設と評価されるよう、またスタッフが幸せと思える笑顔の多い職場を目指し、皆で力併せて頑張ります!